♯121 ピアノの練習は「後ろから」が正解?最後までスラスラ弾ける「逆から練習法」の驚くべき効果

練習法と上達のヒント

「曲の最初の方はスラスラ弾けるのに、後半になるといつもボロボロになってしまう……」
「練習のたびに最初から弾き始めるけれど、結局最後までたどり着かずに終わってしまう」

ピアノを練習していると、そんな悩みにぶつかることはありませんか?
実はこれ、多くのピアノ初心者が陥る「練習の罠」なんです。

いつも最初から弾き始める練習は、一見丁寧に見えますが、実は効率が悪いことも。
そこでおすすめしたいのが、「逆から練習法(後ろから練習法)」です。

4歳からピアノを始めて音高・音大・音大の院に進み、大人子ども含め累積約50名以上にピアノを教え、現役で演奏活動を続ける筆者が、

なぜ「逆から」練習すると上達が早まるのか、その驚くべき効果と具体的な実践ポイントを詳しく解説します。

なぜいつも「最初だけ」上手くなってしまうのか?

結論から言うと、ピアノが「最初だけ上手い」状態になるのは、単純に「最初の小節を練習している回数が一番多いから」です。

多くの人は、練習を始めるときに必ず1小節目の「最初」から指を動かします。

  • 最初から弾く
  • 途中でつまずく
  • また最初に戻る
  • 集中力が切れて練習を終える

このループを繰り返していると、
「1小節目は100回練習しているのに、最後の小節は数回しか弾いていない……」
という圧倒的な「練習量の差」が生まれてしまいます。

その結果、曲が進むにつれて不安が増し、音楽の流れが止まってしまうのです。

「逆から練習法」の驚くべきメリット

この問題を劇的に解決するのが「逆から練習法」です。
これは文字通り、曲の「一番最後の小節」から練習を始める方法です。

① 「知っている場所」に向かって弾く安心感

通常(最初から)の練習では、弾き進むほど「練習量が少ない、未知のゾーン」へ突入するため、心理的なプレッシャーがかかります。

しかし、逆から練習すると、「弾き進むほど、すでに練習してマスターした場所」に合流することになります。後半に向かうほど安心感が増すため、演奏が驚くほど安定します。

② 暗譜の強度が上がり、演奏が止まらなくなる

曲のどこからでも弾き始められるようになると、暗譜(楽譜を覚えること)の質が格段に変わります。

「最初から弾かないと次の音が思い出せない」という状態は、記憶が連鎖に頼っている証拠。
逆から小節を積み上げていくことで、脳内に曲の「チェックポイント」がいくつも作られ、
万が一途中で間違えても、すぐに復帰できるようになります

具体的な「逆から練習法」の実践ステップ

では、具体的にどう進めればよいのか、ステップを見ていきましょう。

  1. ラスト1小節だけを完璧にする
    まずは曲の「一番最後の1小節」だけを練習します。ここだけなら初心者の方でもすぐにマスターできるはずです。
  2. ラスト2小節目を追加する
    最後から2番目の小節を練習します。それができたら、今の小節から最後まで(ラスト2小節分)をつなげて弾きます。
  3. さらに1小節ずつ前に戻っていく
    「最後から3番目の小節」→「最後までの3小節分」というように、少しずつスタート地点を前にずらしていきます

これを繰り返すだけで、曲の終わりが近づくにつれて「ここはもう完璧!」という自信に満ちた演奏に変わっていきます。

練習の質を落とさないための「重要な注意点」

逆から練習する際に、絶対に忘れてはいけないポイントが一つあります。
それは、「音楽の流れ(フレーズ)」を無視しないことです。

たとえ1小節ずつ戻る練習であっても、機械的に音を切るのではなく、「フレーズの切れ目」を意識しましょう。

  • どこからどこまでが一つのまとまり(文章)なのか?
  • 途中から弾くとき、その音はどんな感情で始まるのか?

音楽には呼吸があります。
曲の途中から練習する場合でも、「フレーズの頭」を意識して始めることで、テクニック面だけでなく、表現力も同時に鍛えることができます。

バラバラのピースをつなぎ合わせるのではなく、「意味のある塊」を積み上げていく感覚を大切にしてください。

筆者の経験談:逆から練習で見えてくるもの

私の生徒の中にも、最初はよく弾けるのに、後半に進むにつれて指が引っかかってしまう子は多くいます。
そのような生徒には、必ず曲を部分に分けて練習するようにしています

人によって、最後の小節から練習したほうがよい子もいれば、途中の小節から始めたほうがよい子もいます。
それぞれの課題を見極めたうえで、最適な練習方法を提案することを大切にしています。

練習を始めたばかりの段階ならともかく、何度か練習を重ねたあとで「最初の小節が弾けない」という子は、ほとんどいません。
多くの場合、曲の途中から演奏が崩れ始めます。

途中から弾かせようとしても、
「あれ、どうやって弾くんだっけ……?」
となってしまい、結局最初から戻らないと弾けない、ということも少なくありません。

その状態では、いつまでたっても最初ばかりを弾くことになり、
本当に弾けない部分を十分に練習することができなくなってしまいます。

そこで取り入れているのが「逆から練習法」です。
とてもキャッチーで分かりやすく、ゲーム感覚で進められるのも大きなメリットです。

まずは最後の1小節を練習し、弾けたら1小節前に戻る。
つなげて弾けるようになったら、さらにもう1小節前へ戻る――
そんなふうに、少しずつチャレンジしていきます

実際、いつも曲の後半でつまずいていた生徒さんにこの方法を試してもらったところ、
一度も止まることなく、最後までスラスラと弾けるようになりました

弾けない原因が「練習不足」ではなく、「練習の仕方」にあることは、決して珍しいことではありません。

まとめ:今日から「最後から練習」を始めてみよう

ピアノの上達において、一番の敵は「なんとなく最初から通して弾く」という惰性の練習です。

「逆から練習法」を取り入れることで、

  • 後半の苦手意識がなくなる
  • どこからでも弾ける圧倒的な安定感が手に入る
  • 短時間で効率よく曲が完成する

といった多くの恩恵が得られます。

もし今、練習している曲で「いつも同じところで止まってしまう」と悩んでいるなら、思い切って楽譜の最後の一小節から順に練習してみてください。
少しづつ積み重ねていくことで、あなたの演奏は新しいステージへ進み始めるはずです。

さあ、今日は「一番最後の小節」からピアノを鳴らしてみませんか?

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