ピアノの発表会やコンクール前になると、
「どれくらい前から準備すれば本番に間に合う?」「小さい子はどのくらい時間が必要?」
という相談をよく受けます。
目安としては 3〜4か月前には取り組み始めるのが理想。
子どもの場合でも、譜読みのスピードや仕上げに必要な時間を考えると、最低でもそれくらいは確保しておきたいところです。
ただし、これは“最低ライン”。
もっと長く時間をかけることも決して悪くありません。
じっくり取り組めば、音楽の理解も深まり、細部まで練れた演奏につながります。
ただし長期戦の落とし穴もあるため、注意が必要です。
4歳からピアノを始めて音高・音大・音大の院に進み、大人子ども含め累積約50名以上にピアノを教え、現役で演奏活動を続ける筆者が、
ピアノ本番準備を始めるタイミングと仕上げ方について、お話しします。
本番3〜4か月前:最低ラインとしての「譜読み+全体把握」期間
最初の時期に大切なのは、曲全体の雰囲気をつかむこと。
細かいミスは気にせず、曲の流れやキャラクターを感じながら譜読みを進めます。
そしてここで強調したいのが、
3〜4か月前は “あくまで必要最低ライン” だということ。
時間にもっと余裕を持って取り組むことで、
・曲の世界観への理解が深まる
・暗譜が早めに終わり、仕上げに時間を使える
・演奏の完成度が上がりやすい
といったメリットがあります。
ただし——
長期にわたる練習には「マンネリ化」という大きなリスクが存在します。
慣れすぎてしまい、練習しているのに下手になってしまうことも珍しくありません。
だからこそ、長く取り組むときこそ、
・練習法を変える
・いったん取り組まない時間を作る
・細部と全体を行き来する
こうした工夫が必要になります。
本番2か月前:細部の質を決める集中期間
譜読みが終わったら、ここからは細かい部分を徹底的に整える時期です。
- リズムの精度
- アーティキュレーション
- 強弱のバランス
- 難所の部分練習
- 和声や構造の理解
- 音の方向性・フレーズ感
- 音色・音質づくり
曲の“骨格と筋肉”を作るような大切な期間。
ただし細部だけに偏ってしまうと全体が見えなくなるため、定期的に通しを入れて方向性を確認していきます。
演奏に迷いが出たら、他の人の録音を聴くのもおすすめです。
本番1か月前:通して弾ける状態にするラストスパート
1か月前の目標は、
止まらずに通せるレベルに到達すること。本番を想定して通しの練習を取り入れていきます。
その際、もちろん完璧である必要はありませんが、
・流れが自然である
・曲の構成が理解できている
・不安定な箇所が明確になっている
・緊張状態でも自分の演奏ができる
この段階まで来ていると、本番に向けての“仕上げ作業”がスムーズです。
残りの期間は、
感性を再び前面に戻し、音楽として自然に流れるように整える時間。
知性で作り込んできた内容を、最後に呼吸と感情の流れに乗せていきます。
長く準備するメリットとデメリット
●長期間準備のメリット
- 音楽的な理解が深まる
- 暗譜が安定しやすい
- 練習の負担が分散する
- 心の余裕が生まれ、本番で落ち着きやすい
●長期間準備のデメリット
- マンネリ化で演奏の鮮度が落ちる
- 惰性で弾いてしまい、感性が鈍る
- 変化が見えなくなり、モチベーションが下がりやすい
長期間準備する場合ほど「練習の変化」と「感性の維持」が重要になります。
私の中で一番準備期間が短かった時の話|筆者の経験談
私がピアノの本番を迎えてきたなかで、一番短かった準備期間は3週間でした。
※これは、ソロの本番の話です。伴奏はもっと短い期間で仕上げたこともあります。
それは、大学院1年生の学内演奏会の時でした。
直前までコンクールのために別の曲を準備していたため、超特急で新曲に取り組みました。
結論からいうと、なんとかはなりましたが、仕上がりが本当にギリギリでした。
時間をかけたからといって必ずしも良い演奏ができるわけではありませんが、
もう少しじっくり曲と向かいあえていたら、もっと良い演奏ができたかもしれないという思いはあります。
どうしても無理をしなければいけないときはありますが、
なんにせよ早めに取り組むことができるのであれば、それが一番です。
私もできる限り余裕をもって取り組みたいと、この経験から強く思いました。
まとめ|最低3〜4か月、余裕を持てれば理想。時間を伸ばすなら練習の質を落とさない工夫を
ピアノの本番準備は、
最低でも3〜4か月前に始めるのが確実で、
余裕を持てるなら長く時間をかけるほど良い場合もあります。
ただし、長期間の練習にはマンネリという落とし穴があるため、
・練習法の工夫
・細部と全体のバランス
・感性を鈍らせない向き合い方
がとても重要です。
早めのスタートが、本番の成功を大きく後押しします。
ぜひ余裕あるスケジュールで取り組んでみてください。



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