ピアノを習っていると、
「毎日どれくらい練習すればいいですか?」
という質問を本当によくいただきます。
ですが、結論から言うと――
練習時間は「何時間やったからOK」というものではありません。
私は基本的に、弾けるようになるまでやる という考え方です。
しかし、それは長時間弾き続けろという意味ではなく、
「できないところに向き合う」「課題を一つずつクリアする」
という練習の“質”を大事にしているということです。
4歳からピアノを始めて音高・音大・音大の院に進み、大人子ども含め累積約50名以上にピアノを教え、現役で演奏活動を続ける筆者が、
ピアノの練習時間から考える、上達の秘訣をお伝えします。
■ 小学生は「毎日1時間できたら十分」
特に子どものうちは、
毎日ピアノに触れる習慣をつくることが最優先。
小学生で、宿題・習い事・遊びの中で
毎日1時間しっかり練習できたら良い方です。
むしろ、
・短時間でも毎日やる
・ピアノに触れることが生活の一部になる
この方が、長期的には確実に伸びます。
「週に1回まとめて3時間」より、
「毎日20分」のほうが圧倒的に効果的なのは、スポーツも語学もピアノも同じです。
■ 音大受験生は5~6時間が目安
中高生で音大受験を目指す場合、演奏レベルも曲数も一気に増えます。
・課題曲
・初見
・ソルフェージュ
・エチュード
・選択曲
など、準備すべき内容が多くなるため、
5〜6時間は必然的に必要 になってきます(あくまで目安)。
もちろん、演奏時間が長くなれば練習時間も必然的に増えます。
ただし、ここで落とし穴があります。
■ 長時間練習の最大の敵は「だらだら練習」
時間を長く確保できるようになると、人はつい油断します。
・安心する場所だけ弾き直す
・不安な部分だけなんとなく触る
・通しただけで満足してしまう
・ピアノに向かった“時間”だけで満足してしまう
これが最も危険です。
練習時間が長くなると、中身が薄くなるリスクがある
ピアノの練習は、ただの“作業時間”ではありません。
「何を改善するか」「どこを目標にするか」を考え、
計画的に進めなければ、いくら時間を使っても上達しません。
■ 本当に上手な人ほど“時間も中身も濃い”
一流の音楽家の中には、
10時間以上練習する方もたくさんいます。
しかし、ここで勘違いしてはいけません。
長時間やっているのは、ただ量に頼っているのではなく、
練習内容が圧倒的に濃いからこそ、長い時間集中できる のです。
・テンポを細かく調整する
・一音の響きを確かめる
・フレーズの方向を探す
・運指を研究する
・弱点の克服に時間をかける
こうした積み重ねを徹底しているからこそ、長時間でも質が落ちません。
■ 凡人は“練習量+練習の質”の両方が必要
一握りの天才でない限り、
練習時間と練習内容の両方を大切にする必要があります。
ピアノは実は、とても地味で、
・コツコツ続ける力
・忍耐力
・思考力
が求められる楽器です。
ただ長く弾くだけでは上手くなりません。
短時間でも考えて練習する人の方が確実に伸びます。
■ 練習時間の目標はいらない|筆者の経験談
私自身は「何時間練習する!」という目標をたてて、練習に取り組んだことはありません。
小さいときは曲も短かったので1時間くらいで終われましたし、
大きくなってからは練習することが多くて、気がついたら時間も長くなっていました。
社会人になってからは、学生の頃とは異なり、練習時間を確保するのが難しくなりました。
「今日、2時間はピアノに向き合えるようにするぞ!」
こんなふうに目標を立てることはあります。
練習の目的が、「何のために練習するのか」から「何時間練習できたか」
に変わってしまうと、とても危険です。
なぜなら、練習の質という大切な要素が見落とされてしまうからです。
時間数にこだわりすぎていないか、あらためて自分に問い直してみましょう。
練習時間の目標ではなく、練習内容の目標を立てましょう。
私自身も試行錯誤の最中です。
練習を始める前に、必ず「今日はここをもっと上手に弾けるようにするぞ!」
と意識してから始めるようにしています。
■ まとめ
・練習時間は「何時間」ではなく「どう使うか」が重要
・小学生は毎日1時間できれば十分
・音大受験生は5〜6時間が目安
・長時間練習の落とし穴は“だらだら練習”
・本当に上手な人は、時間も中身も濃い
・凡人は「量×質」の両方が必要
あなたの毎日の練習が、
ただの作業ではなく「成果につながる時間」になるよう、
ぜひ今日の練習から意識してみてください。



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