ピアノの譜面に出てくるアクセント(>)。
多くの人は「ここを強く弾く」という指示だと思っています。
しかし、アクセントの本質はもっと奥深く、決して“音量を上げる”だけの記号ではありません。
アクセントとは、音楽の中に意味や重心、感情を与えるための大切な表現なのです。
今回は、4歳からピアノを始めて音高・音大・音大の院に進み、大人子ども含め累積約50名以上にピアノを教え、現役で演奏活動を続ける筆者が、
ピアノにおけるアクセントの本当の役割を、できるだけ具体的にお話ししたいと思います。
■ アクセント=「強い音」では、音楽が硬くなる
アクセントを“強打”として捉えてしまうと、音が硬くなり、流れが止まってしまうことがあります。
とくに初心者のレッスンでは、アクセントがついた瞬間だけ突然 ff のように大きく弾いてしまい、フレーズが分断されてしまうことも少なくありません。
しかし実際のアクセントは、単に「大きく」ではなく、
- その音に注目を集める
- 語り口の重心を置く
- 次への推進力をつくる
- 音楽の中の“意味”を強調する
といった役割を持っています。
つまり、アクセントは 音量ではなく“意味”の強調 なのです。
■ アクセントは「言葉のイントネーション」と同じ
アクセントを理解するヒントとして最もわかりやすいのは、言葉のイントネーションとの共通点です。
たとえば日本語でも、微妙にイントネーションを変えるだけで、伝わるニュアンスはまったく違いますよね。
ピアノのアクセントも同じ。
どのように“重心”を置くかによって、音楽が語りかける意味が変わります。
- 少し沈むように重さをのせるアクセント
- 息を吸うように軽く前へ押すアクセント
- ささやくようなアクセント
- 不安や痛みを感じさせる、内側に向いたアクセント
どれも記号は同じ「>」ですが、表現はまったく違います。
■ 感情のアクセント:痛み・叫び・ためらい
アクセントには、感情を伝える役割 もあります。
たとえばショパンのノクターンに出てくるような、さりげないアクセント。
それは決して派手な強調ではなく、「心の痛み」や「言葉にならない叫び」をにじませるためのごく繊細なタッチ で弾かれます。
クラシック音楽には「表情記号」だけでは表しきれない感情があり、アクセントはその感情の“道しるべ”になります。
- 少し沈み込むようなアクセント → 悲しみ
- 上へ跳ね上がるアクセント → 驚きや喜び
- 横へ流れるアクセント → ため息や迷い
このように、アクセントの種類によって、音楽が語りかける情緒が変わっていきます。
■ アクセントを“重さ”で弾くということ
鍵盤の上では、「強く叩く」ではなく “重さをのせる” というアプローチを取ることもあります。
重さのアクセントとは…
- 指の腹に少しだけ体の重力を預ける
- 打鍵スピードをむやみに上げず、重心を音に沈める
- 手首が固まらず、自然に動ける状態を保つ
これらを意識するだけで、アクセントの質は大きく変わります。
重さをのせたアクセントは、音が深く、柔らかく、でもしっかりと響きます。
聴く側は「ここが大事なんだ」と自然に感じ取ることができます。
■ アクセントは「音楽をどう語るか」を示すもの
アクセントの意味を考えずに弾いてしまうと、音楽は単調になります。
しかし、アクセントの“言葉としての役割”を理解できると、演奏は一段と立体的になり、伝わる力を持つようになります。
アクセントは、音楽にメッセージを宿すもの。
- この音は何を語りたいのか
- どんな気持ちでここへ向かっているのか
- なぜ作曲家はここに印をつけたのか
その意味を考えながら音を出すことで、演奏はより説得力を帯びていきます。
アクセントの真意を探る|筆者の経験談
アクセントとほぼ同等の意味を持つ音楽用語で
「sf(スフォルツァンド)」というものがあります。
こちらもアクセント同様「強く弾く」だけでは、意味がないと思っています。
「なぜ、作曲家がそこにアクセントやsfをつけたのか」
その意味を考えて、「強く弾く」以外の意味を持たせられた時に、
初めてアクセント、またはsfは意味のあるものになります。
と言っている私ですが、昔弾いていた曲を弾き直したりすると、ついつい癖でただ強く弾いてしまっていることがあります。
こうして皆さんにお伝えしているように見えて、実は自分への戒めとしても、このブログを書いています。
■ まとめ
アクセントは“強く弾く記号”ではありません。
それは、音楽に 重心・ニュアンス・感情・方向性 を与えるための大切なサインです。
- 言葉のイントネーションのように、意味を持たせる
- 重さをのせ、音に深みを与える
- 感情を含ませ、内面を表現する
- フレーズ全体の流れを整える
アクセントの本質を理解すると、同じ曲でも驚くほど表現が変わります。
音楽が語りだし、聴く人の心に深く届く演奏へと繋がっていくはずです。
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